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昨年12月初旬から休日の度に少しずつ読み進み、今年になってようやく読了した。長編小説と違ってストーリーで読ませるものではないので、短編小説は一篇毎に一気に読み終えないとうまく味わうことができない。なのでけっこう時間がかかってしまった。 面白かった。実に良くできた連作短編集で、登場人物も舞台設定も申し分ない。熟成された酒を思わせる文体も。倉橋由美子って、こんなに文章が上手かったっけ?というのが正直な感想だ。 こんなことを書くと世の女性達から非難轟々だと思うが、率直に言ってただ一人の例外を除いて女流文学者とその作品というのは好きではなかった。というか、私の中では稲垣足穂が言うところの「文学以前の作品」ばかりだと思っていた。マルグリット・ユルスナールと彼女の作品を除いては。 でも今回のこれを読んで認識を改めた。良い作家に女も男も関係はなくて、ただ良い作品とそうでない作品があるだけだという極めて当たり前の事に。 家柄も申し分なく何もせず一生遊んで暮らせるだけの財産を持ち、イケメンで知性とエロスに溢れた若きスーパースター慧君(まるで今様光源氏ですな。このあたりが唯一「女流」らしいところ)が怪しいバーテンダー九鬼さんやその弟子で慧君の愛人となる真希さんが作る「魔法の酒」の力で、あるときは中島敦の世界にも似た桃源郷に、あるときは安吾が描いた吉野の山を髣髴とさせる桜の木の下に、はたまたあるときはカフカの虫を思わせるグロテスクな世界に遊ぶ冒険譚は実に幻想的、怪奇的で美しくかつ楽しい。 本作はタイトル通りまさしく「酔郷譚」というに相応しい。かつて沖縄・那覇のバーで、世の中にそれ一本しか存在しないという地元の酒造が作った泡盛の古酒30年物を一杯だけ飲ませてもらったことがあるがその酒を思わせる濃厚でかつ芳醇。お見事!乾杯!! |
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